雨傘
校庭には、桜が咲いていた。
小学校の入学式も、中学校の入学式にも、隣には母がいた。「入学おめでとう、さゆりちゃん。」そう言ってくれた。淋しいわけじゃない…。けど…
『明るいね。』
「…?」
桜の木の下に、1人の少年がいた。
「…え?」
『髪の色。明るすぎない?』
なんなのだろう…。
「お説教ですか?」
『んーん。違うよ。』
彼は、ニコッと笑った。
『親友と一緒!』
ふわっと、風が吹いて、桜が舞う。彼の頭にも、たくさんの花びらがついた。その姿を見て、思わず私も笑ってしまった。
『あ、オレ…』
<<新入生の皆様は、クラスの確認をしてから、こちらにお集まりください。新入生の皆様は…>>
「行かなきゃ…」
まだクラス確かめてない…。
「じゃあ…。」
『あ…っ、ちょっと!』
彼が呼び止めた声は、聞こえなかった。