別れ屋
落着
朔の日の晩
新月で見えずに星だけが照らされて光っている
「あの…本当にいいの?」
ある一軒家でその会話は聞こえた
「何が」
テーブルの上に用意されたものを見つめながら問う
「晩御飯おごるだけで…」
そう、ここは早紀の家であり盛り付けられたハンバーグやらサラダやらの料理を箸でつまんで口に放り込む愛華に疑問を抱く
「いいって言ってる。あ、このドレッシングうまい」
ピーナッツがところどころ散りばめられたサラダを重点的に食しながら言う
「ああ、で。お金のことだけど」
リスのように片頬にサラダを詰め込み話かける
「あ、これだけしか…」
出されたのは10万円。
「いや、これで十分。逆に多いくらいかもね。私今回何もせずにちゃっちゃか終わっちゃったし」
「そ そんなっ」
「それより一人暮らしでしょ。なんでこんなお金ポンと出せるわけ?」
「あ…それは、」
「それはなしにしてくれね?」
と、そこで顔を出したのは早紀の依頼で頼まれた拓也であった
「…ってかあんたいたんだ」
「うわ、酷ぇーなおい!サラダとか運んだの全部俺じゃん!」
「あ、ごめんハンバーグとか残りタッパーの中入れて持って帰っていい?すごくおいしい、これ」
「え、あ、いいけど…」
「無視かよ!」
拓也は目に涙を浮かばせながら突っ込む
それを見てクスッと笑う早紀
「早紀はお前何笑ってんだよ!」
照れ隠しに言ったつもりだったのだろうが
「だって拓也おかしいんだもん」
「何をお!!」
―あーあー…ま、平和で何より
そんな状況を片目にタッパー片手にため息をつく愛華
―なんか私…邪魔者みたいじゃね?
一人作業を黙々と続けながら考えるのであった