ヤクビョウ神†天使の微笑み†
『通りかかっただけ』

 そこへ雫が助け船を出す。

「あ、そう、通りかかっただけで、え~…、あの人がちょっと知り合いに似ていたものだから・・・」

 詰まり詰まりに話す刹那に、警官は疑うような目付きを向けた。

「本当かぁ~?」

『本当よ!』

「本当よ!
 いや、です!」

 ついつられてしまった。

『・・・アホ』



 少し間が空いたが、警官は不思議そうに刹那の横をチラチラと目配せしていた。

「まあ、着物の嬢ちゃんなんて珍しいけど、知り合いを隠れて見てたあんたも珍しいもんだな」

「あははは・・・」

「全く。
 近頃、妙な事件が増えてるんだ。
 そんなことに紛れておかしなこと仕出かすんじゃないぞ?」

 そして警官は「じゃあな」とだけ言うと、ペダルをこいでさっさと行ってしまった。
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