ヤクビョウ神†天使の微笑み†
 季節は夏、時刻は夜の8時を回った所。

 この日は朝から雨が降り続き、空は黒雲に包まれて辺り一面暗闇と化している。

 周囲を照らすものとして、街灯と、間を置いて通っていく車のヘッドライトくらいだった。



 ここ、信号が赤で点滅を繰り返す十字路脇に、地面にへたりこむ人影があった。

 傘は脇に投げ出されて、その男性はずぶ濡れのまま硬直している。

 手前には、仰向けに横たわる一人の女性。

 男性は女性を抱き抱え、必死に訴えかけるが、その声は雨の音に掻き消されて聞き取れない。

 そんな中、

 横たわる女性の手が抱き抱える男性の頬を撫でる。





 そして・・・





 その手は、まるで落ち葉のように地面にパタリと投げ出された。
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