ヤクビョウ神†天使の微笑み†
 ここは東京。



 太陽が凹凸した地平線から顔を出す。

 朝7時の秋の空は、雲1つ無い快晴だ。

 この終わりの無い青空の下、とある5階建てマンションの最上階の東側はじっこの住人は、まだベッドの上で濡れタオルを折り畳んで頭の上にのせて寝ていた。





『“刹那”、体、大丈夫?』

 隣でボーッと見つめる女性は、霧の彼方から聞こえてくるような声で話しかける。



「ああ、“雫”のお陰でだいぶ良くなった」

 刹那と呼ばれた男性は仰向けのままボソッと言う。





 本名は“光城 刹那”



 声からして年は二十歳くらいだろう。

 髪は黒く、全体的にボサボサだ。

 顔は真上を見ているが、黒い瞳は右脇を見つめている。





 だが、目線の先には天井の角っこだけだ。
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