ヤクビョウ神†天使の微笑み†
 雫も、右手を添えるように刹那の手に触れる。

『刹那の手、暖かい・・・』



「そっか・・・

 でも、手のあたたかい人は心が冷たいっていうしなあ」

 茶化すように、刹那は雫に言うと、雫は慌てて言い返す。

『あ、違っ!
 そんなんじゃなくて、魂を通じて暖かいってことで、そんな意味で言ったんじゃ・・・』

「分かってるよ。
 雫ったら大袈裟なんだから♪」

 刹那はせせら笑う。

『もう、刹那の意地悪・・・

 ・・・ん、川だ!』

 雫は握られてる刹那の手からスルッと抜けて、川の方に飛んでいく。



 ここは、唯一この街で自然の多い場所。

 今通って来た林道を出た所に、盛り上がった土手道がある。

 その奥には左から右に向かって、都市部にしては綺麗な川が優雅に流れていた。





『あ、誰かいる』

 川のほとりに若い1人の女性が、異様に長い黒髪に淡い桃色の着物という姿で、川の中を見つめていた。
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