騎士はキミに恋をする
「…そうして、
彼女は美しき死体となった。
9人の孤児と一緒に、」
テラスが昔話を話し終えた。
聖堂のなかは、
相変わらず静寂に包まれていた。
「何か、ずいぶん壮大だね。」
呑気に感想を言う。
「そうだな。
自分でもそう思う。」
テラスが苦笑いしていった。
「10人は、3000年たった今でも
まるで生きているように死んでいる。」
テラスが前を見た。
私もそれにならって前を見る。
目に映るのは手を差し伸べる彼女だけ。
「じゃあ、あの人が
この物語に出てくる女の人なんだ。」
虚ろそうに見えて
どこかに光を宿す目は
一体何を見ているのだろう?
私とテラスはしばらく無言のまま、
彼女を見ていた。