騎士はキミに恋をする
「必要なのはお姫様だけ?」
「そうだ。
必要なのは彼女だけだ。」
表情のない声が答える。
「騎士はあたしが殺してもいい?」
少女はわくわくしたように
低い声に訊いた。
「いいだろう。
だが、今はその時ではない。
時期を待て。」
その答えに少女は
つまらなそうに「はあい」とだけ答えた。
「いい子だ。」
低い声がそう言うと、
今度は「えへへー」と笑った。
「お前も騎士に見つかる前に帰れ。」
低い声はそう言った。
「うん。わかった。
今すぐ帰るね。お父様。」
少女は言うとその場に立ち上がった。
「ばいばい。
また会おうね、騎士とお姫様♪」
少女はそう言って、
さらに天井を駆け上り、
てっぺん付近で忽然と消えた。
後にはまた静寂がその場を支配した。