騎士はキミに恋をする
長い長い時間走り続けて、
脚が痙攣し始めてきたような気がして
動かしていた足をとめた。
いつの間にか追いかけて来ていた足音は
聞こえなくなっていた。
だから、ほっ、っと
ため息にも似たような感じで
肺に溜まっていた息を吐きだした。
でも、ほっとしたのも束の間、
目の前に、
後ろから追いかけて来ていた
あの気配がテラスの前に姿を現した。
と、言っても、
姿は見えない。
「はー、はー、」
と、生々しい息遣いしか
聞こえてこないからだ。
だが、それで恐怖が蘇るのは
とてつもなく簡単なことだった。
ここで、普通の人ならば
腰を抜かしたり、
悲鳴を上げたりするものだが、
テラスのプライドが
そんな無様なことをする事を
決して許さなかった。
必死に歯を食いしばることで
恐怖を無理やりに押しこみ
足に力を入れることで
地面に尻もちをつくことを避けた。