騎士はキミに恋をする
だが、次の瞬間、
触った腕がピクリと動いた。
そして、テラスの胸に沈めていた
顔をあげてくる。
何も見えない暗闇のはずなのに、
その顔だけははっきりと見ることができた。
愛しい人の顔が
テラスに向って微笑みかけていた。
「…あ、」
やっと絞り出した声は
言葉をうまく紡ぐことができなかった。
今まで不安や恐怖でいっぱいだった胸に
不意に安堵という名の感情が
胸いっぱいに広がったからだった。
悪戯っぽく笑う愛しい人につられて
テラスもほんの少しだけ頬を綻ばせた。