騎士はキミに恋をする

「大丈夫、 
 怖がる必要なんてないんだよ。」

微笑んで言う君。

「貴方さえ笑っていてくれれば、
 貴方さえ幸せならば
 私なんてどうなってもいいの。」

何処かで聞いた言葉。
最期の別れ際に
君がぽつん、といった言葉。

いつの間にか
とても弱弱しくなってしまった呼吸。

浅い呼吸を繰り返しながら
君はしゃぼん玉のように淡く微笑んだ。

「だから、」

そういって身体から淡い光を発し、
テラスにその光が移動すると同時に、

君は透けて暗闇に溶けて消えた。

「貴方は私のことを引きずらないで、
 あの娘と幸せになって。」

そんな言葉を残して。

「ぁ…っ」

消えた君を掴もうと伸ばした両手は
虚空をかすった。

溢れ出た涙。
ぼろぼろと流しながらテラスは
愛しかった人の名を呟いた。








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