騎士はキミに恋をする

その頃、
アンジェリーナは城の地下にある、
小さな自分の部屋に戻って、
着ていた白衣を脱ぎ捨て、
いつも来ている鎧を着ていた。

純色の黄色に鈍く輝くその鎧は、
アンジェリーナが
長年愛用してきたものだった。

鎧の所々についた、
眼に見えないような小さな傷や
大きな傷の数々を
指先でゆっくりとなぞりながら、
たくさんのことを思い出し、

ほんの少しだけ笑みが零れた。

が、次に鎧に腕を通した時には、
もうその双眸には
悲しみと怒りしか宿していなかった。

全ての負の感情を
鎧という檻に自分ごと押し込めて、

脇のほうに着いた留め具を
かちゃり、かちゃり、と閉めていく。

鎧を着た後、
部屋の隅にあるクローゼットを開けた。
中には、十数着の私服があった。

だが、目的はそれなんかではなかった。

アンジェリーナはクローゼットの奥に
両手を勢いよく突っ込むと、
中からを兜を取り出した。

両の横に雄々しいマンティコアが描かれた、
鎧、髪の毛と同様の色をしている
綺麗な黄色の兜だった。











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