騎士はキミに恋をする
「降りるぞ」
その一言と共に、
ユートピアはまた急降下する。
しかも、今度はさっきと違って、
冷たい風が玖零羽を襲う。
「寒…っ」
テラスの服の裾をつかんで
落ちないようにと必死になるが、
寒さで手がかじかんで、
どうしても手に力が入らない。
手が離れそうになった。
もう、駄目……!
一瞬、手が離れる。
一瞬だけ。
「本当に危なっかしいな。お前。」
次の瞬間、
玖零羽の冷たい手を
テラスの暖かな手がつかんでいた。
「まあ、こんだけ寒ければ、
仕方ないな。」
玖零羽の手をしっかりと握って、
テラスが玖零羽に向けて、
優しく笑う。
普通の女の子なら
ここで胸キュンしても
おかしくない筈なのだが、
イマイチ玖零羽の反応は薄かった。