騎士はキミに恋をする
長い廊下をやっと渡り終わり、
私とテラスは、
大きな広間に出てきた。
テレビでよく見た感じと
少しだけ違う。
たくさんの椅子があるのは一緒。
うす暗くなく、
明るすぎでもなく、
そして正面には
よく知る大きなステンドグラスはなくて、
装飾がされた大きな台の上と、
その上に一人佇む、美女の像。
まるで生きているのではと
錯覚してしまう程に精巧に作られた
彼女は、夢で見た女神とは違う、
優しさを湛えた雰囲気の女性だった。
彼女は廊下から出てきた私たちに
右手を差し出して、
「おいで」とでもいうような
淡い笑みで私たちを見ていた。
彼女も女神のひとりだろうか?
そもそも女神なんて何人いるのだろうか?
玖零羽は声を発さない。
テラスも声を出さない。
無表情で無言の2人に
美女は手を差し伸べて、
淡い笑みを浮かべたままだった。