騎士はキミに恋をする

「…彼女は、」

一体どのくらい沈黙を貫いていたのだろう?

テラスが長い沈黙を破って
初めて私は飛んでいた意識を戻した。

「美しき死体。」

「…。は?」

いきなり、
突拍子のないことを言うテラス。
反射的におかしな声を開ける私。

「彼女は既に死んでいる。」

「…ミイラ?」

「そう、それ。」

こんがらがる頭で考える。

第一、あんな、
人に手を差し伸べた格好で
死ぬとかちょっと無理な気がする。
いや絶対に無理。
立ってるし。目、開いてるし。

それにミイラにしては綺麗すぎるだろ。
よくドキュメンタリーとかでやってる
グロテスクなあれとは大違い。

これは違う。
本当に美しい。の一言。

ツッコむ場所はまだまだあるけど、
私はいつの間にかその死体の美しさに

魅せられていた。







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