純愛ワルツ

「…あなたは確か、LOVE SICK cafeの」


「茜。胡桃の彼氏の茜だろ」


「…え?」



戸惑う胡桃の手を握ると、その手が一瞬震えた。



嫌われてもいい。


これで最後になるのなら
伝えなきゃ。
謝らなきゃ。




「ごめん、ごめんな。俺、胡桃にロマンチックな場所でロマンチックなシチュエーションで、気持ちを伝えよう、キスしようって、格好付ける事ばかり考えてたんだ。その方が喜んでくれるって想ってたけど、逆にそれが胡桃を不安にさせてたんだよな」




格好なんて付かないくせに
いっちょ前に大人ぶっていた自分が、今想うと恥ずかしくて堪らない。



あんな態度取らなくても
いつもの胡桃の一挙一動に萌えてる姿を見せても

この子は俺を嫌いになんかならなかったよな。   



胡桃の事を好き好きって想ってるだけで、ちゃんと全てを見てなかった俺への罰だ。





「…あ、あの?」


「俺はやっぱりどう転んでも、何があっても、胡桃が好きだよ」




嘘なんかじゃないよ。
心の底からの本心だよ。

どうか、伝わって。






「…ありがとうございます」



胡桃を見ると、胡桃は何だか泣きそうな目をしていた。


嬉しい時に泣いてくれる胡桃。




あぁ…
そういう事だったのか。


なっちゃん、
俺にはちゃんと
愛があったみたいです。





「なんですか?離してっ…」




泣きそうな胡桃を抱きしめれば、拒否の言葉を吐いてはいるけど、その小さな体は抵抗はしない。



本当、バカだなぁ。





「もう、いいよ。いいんだよ、胡桃」


「何がですかっ!?」


「俺を騙そうなんて100万年早い」


「…ーっ!!」




真っ赤になって俺の顔を見上げる彼女に、囁いた。




「愛してるよ、俺の人生の中でいちばん」




そう言ってキスを落とすと、
その大きな瞳からボロボロと涙が溢れ出た。
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