純愛ワルツ

「俺、こんなんだけど胡桃のこと本気で大好きだよ。胡桃だけを真面目に大切に想ってる」





離れていく人を
追おうとは想わなかったし
追うことなんてなかった。



面倒くさいとか
そこまで執着してなかったワケじゃなくて


自ら離れていく人が
戻ってくる事がないと知っていたから
傷つくのが恐かったんだと想う。





でも、この先また
胡桃が離れようとしても


胡桃だけは絶対諦めない。





「いや、まぁ…本当こんなだから胡桃に伝わってるかは分からないけど」



自信はない。

けれど、もう
彼女を手放すのは嫌だから。


どんな恥をさらしても
どんな痛みを感じても

俺は彼女を愛し続ける。





ふと、静かになった胡桃を見るとこちらを向いて
さっきまで頬を押さえていた手で口元を押さえていた。



その瞳からは大粒の涙が溢れ出ている。




「伝わり過ぎてます。ありがとう茜くん。私、幸せです」



「おいで、胡桃。抱きしめさせて」





一瞬、潤んだ瞳を揺らした胡桃は涙を拭うと駆け寄ってきた。


体を引き寄せて少し伸びたフワフワの髪を撫でれば
強ばっていた体が、俺の体に密着する。





「…こうしてるとヤバい、マジで癒される」


「茜くん…」


「ずっと、俺の胡桃でいてね」




胡桃が少し強く
抱きしめてる俺の服の裾を掴んだ。


俺も、もう少しだけ
腕に力を込めた。





こんな純粋な
愛し愛され方があるのかと

何だか泣きたくなったのは
胡桃には内緒にしておこう。






















【純愛ワルツ・END】
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