純愛ワルツ
「吉澤先輩は彼女いるんスか?」



あんま…っーか、全く興味ねぇけど何となく聞いてみた。




「今はいねぇし、もういらねぇ」


「今は?…あー、アンタ遊び人そうだから痛い目見たんだろ?」



図星を突いてしまったのか、いつもの倍の力で殴られた。




「俺はベースが命なんだよ!ベースが俺の女なの!!」



うわっ。

鳥肌発言しやがった。





「でも、ベースとじゃヌケな…」



ベシっと顔をひっぱたかたれ、悶絶する。


ぐぉぉぉ!!
いてぇ―っ!!




「お前なぁ、女は抱く為にいるんじゃないんだぞ。癒しの為だ」



あーはいはい。



これだからロマンチストは。
これだから夢追い人は。




男女の関係は、そんな綺麗なものじゃねぇって事を分かっちゃいねぇ。





「どんな女がタイプなんですかい?ベースみたいに平たい顔した、ギャンギャンうるせぇ女?」


「…バカな女は嫌いだ」



先輩がバカだから

バカとバカじゃ本物のバカップルになっちまうもんな。




「多少ウザくてしつこくても、一途に追い掛けてくれる女がいいな」


「ふーん…」



変な趣味。




「ふーん…って。紹介してくれるんじゃねぇのかよ!?」


「あー無理無理。俺の知り合いの女はみんな、俺の事が好きだから」


「…お前、死ね」


「はぁ!?お前が死ね!」




再び取っ組み合って騒いでいたら


空のグラスを乗せたトレーを持って、胡桃ちゃんがカウンターにやって来た。
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