純愛ワルツ
「俺らは完全ノケ者だな」


「うん。でも折角の沖縄だもん。みんな恋人といたいよね」




よくよく周りを見れば、いつこんなに増えたのかと思うくらいカップルで溢れ返っていた。



みんな旅行前に告白したのかな。




…いいなぁ。





「ここに茜くんがいたらなぁ…」




みんなみたいにイチャイチャは出来ないけど



茜くんがいるだけで



楽しい旅行が何倍も楽しくなると思うんだ。





それに茜くんに、選んでくれたこの水着を着た姿見て欲しかったな。






「綾瀬は彼氏いないの?」


「うん、いないよ。高山くんは…って…」




失恋しちゃったんだっけ?



わわっ!

私ったら傷をほじくり返すようなこと聞いて最低!!





「俺もいないよ。…だって俺が好きなのは、ずっと綾…」




何かを言いかけた高山くんを誰かが後ろから突き飛ばした。



高山くんは凄い恰好で砂浜に倒れている。





「…あー悪いね」




高山くんを突き飛ばした人はそう言って去って行った。




…あれ?

今の………






「茜くん?」




サングラスにターバン姿だったから定かではないけど



今の茜くんだったような…







いやいや。

なんで茜くんが沖縄にいるの?



もし茜くんだったら声掛けてくれるはずだもんね。




似てる人だね、きっと。






…私、茜くんが好き過ぎて誰でも茜くんに見える目になっちゃったのかな。




でも

茜くんだったらよかったのにな。
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