純愛ワルツ
次の日。


観光をしながら、胡桃の後をつけていた。


いや…間違い。



観光をしながら、影から胡桃を見守っていた。






よしよし、今日は周りに変な男はいねぇな。




胡桃は女の子2人と土産物を眺めている。




「茜くん、何なら喜んでくれるかなぁ」




…ん?


今、エンジェルボイスで『茜くん』って聞こえたけど。




聞き間違いじゃねぇよな?







「おい、柏木!そんなに近付いたらバレるって(小声)」




帽子を目深に被ってスススッと胡桃に近付くと、バカ女が大声で叫んだ。





「あーかねっ♪何かいいものあったのぉ?」


「…え?あ…天音さん?」




しまった―――!





「胡桃ちゃん。また会ったね」




天音のバカ野郎。



やべぇって。

どうする、俺!?





いや、焦るな。


俺はストーカーしに来たんじゃなくて、先輩達とバカンスに来ただけで…





「茜…くん?」




ギクッ。





「ぐ…偶然だな」


「…やっぱり…茜くんと天音さんは、そういう関係だったんですね」


「え?何?」


「…なんでもないです」





バレたなら仕方ねぇ。



胡桃をさらって2人で沖縄を満喫しちまうか。



先輩だって天音と2人になりたいだろうし。






そう思って胡桃の手を握ると、物凄い力で振り払われた。





「…胡桃?」

「…私も彼氏と行動を共にするので。失礼します」




ペコッと頭を下げて、胡桃は友達の元へ駆けて行ってしまった。
< 61 / 144 >

この作品をシェア

pagetop