純愛ワルツ
「…ん?」




チラリとカフェの入口に目をやると、胡桃が入るか入らまいか行ったり来たりしているのが見えた。




何してんだ?





胡桃は鏡で前髪をチェックしたかと思ったら


制服のリボンを直してそわそわしている。




胡桃だから可愛いものの、他の奴だったら完全な不審者だ。





「胡桃?中入らないの?」


「あっ…あかっ…茜くんっ!」




外に出て声を掛けると、胡桃は一気に真っ赤になった。



あぁ、俺に会うのが恥ずかしかったんだな。



だから、あんな…






「ほら、おいで」




手を差し延べると、胡桃はもっと真っ赤になって


少し泣きそうな顔をしながら、その手を取った。





何でこんなに可愛いんだよ。



作戦か?

俺を更に惚れさせる罠か?




まぁ胡桃になら手玉にされても全然OKだけど。





胡桃の手を引いて席に着くと、胡桃が俯きながら話し出した。




「あ…茜くん、今日はバイトじゃなかったんですね」


「うん。さっきまで胡桃のお兄様と話してたんだ」


「お兄ちゃんと…ですか?」





胡桃は首を傾げる。
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