純愛ワルツ
「ここが茜くんのお家ですか?」


「うん。さ、入って」




茜くんは鍵を開けると、中に入れてくれた。



部屋の中は必要最低限の家具と電化製品


そして分厚い医学書がズラリと並んでいる本棚が置いてあった。





「一人暮らしだったんですね」


「うん、言ってなかったっけ?」


「はい。ご両親はどちらに?」


「さぁ?離婚して別々に暮らしてるから分からないけど元気だよ。2人共医者で、すれ違いの生活を送ってたから別れても仕方なかったのかも」




離婚…。





「でも今でも時々2人で俺に会いに来るし、円満離婚ってヤツだったのかもね」



そう言って笑う茜くんは、どことなく寂しそうだった。



私の両親も共働きで、すれ違いの生活を送ってる。



それでも夫婦でいられるのは

茜くんのご両親みたいに忙し過ぎるお医者さんじゃないからなのかな?





「わ…私、看護婦諦めます!」


「へ?」


「茜くんとすれ違い生活を送るなんて耐えられないです。もっと余裕の持てる職業探します!だから、寂しくなんてないですよ」




茜くんの手を握ってそう言うと


茜くんはその手を引っ張ってギュッと抱きしめてくれた。





「胡桃可愛過ぎ。そんなに虜にして俺をどうするつもり?」



うっ…


心臓がバクバク鳴り過ぎて痛い。




こんなに高鳴ってたら、茜くんに伝わっちゃうよ〜!
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