純愛ワルツ
「先輩、今天音傷心中だから優しくしてやって下せぇ」




その日、学校帰りにバイトに向かい、カウンターに立ちながら吉澤先輩と話していた。





「は?傷心?」


「俺にフラれたからね」




そう言うと、吉澤先輩に胸倉を掴まれた。






「…悪い。お前が胡桃を好きなのは分かってるし、お前と天音ちゃんが付き合わなくて良かったとも思ってる。…だけど、傷付けたのに腹が立つんだよ。仕方ねぇのにな」


「…俺だって、傷付けなくて済むものなら傷付けたりなんかしなかったよ」




見知らぬ女や少し知り合いの女に告られるのとは違う。



うぜぇし、うっとうしいけど

天音は……






「茜くん」




ボッとしながら仕事をしていると

いつものようにカフェに胡桃がやって来た。





「…胡桃」

「どうしました?今日の茜くん、元気ないですよ?」




クリクリした目で心配そうに俺を見つめる胡桃。



いつもだったらその視線が眩しくて腰が砕けそうになるのに

今日は何ともない。





どうしたんだ、俺は…。






「いや…。何でもないよ。胡桃は今日もココア?」


「はい、お願いします」




その後、胡桃が帰り店内もガランとし、閉店時間を迎えた。
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