純愛ワルツ
「胡桃なら今さっき帰ったぞ」



カウンターから身を乗り出して、あの子が座っていた席を覗いていると


後ろにいた吉澤先輩が呟いた。




「何で引き止めててくんなかったんスかぁ!」


「は?知るか」



うぜー!

てか、馴れ馴れしくあの子の事、名前で呼ぶな!!




「つか、あいつコレ忘れてったんだよ」



先輩が差し出したのは、ある高校の生徒手帳。




「別に明日も来るだろうから明日返せばいいけど、お前今から休憩なら追い掛けて渡してきてくれねぇか?」



よっ…吉澤先輩ぃぃい!




「今すぐ行ってきまーす!」


「現金な奴だな」




今この瞬間だけは、アンタを先輩と敬う事にするよ。




と、思いながら走って店から飛び出した。
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