純愛ワルツ
「う〜…ん。腹減ったぁ。胡桃も腹空かない?」



起き上がった茜くんはゴソゴソと台所を物色している。




…メール読んじゃった事、ちゃんと謝った方がいいよね。




そう思い、冷蔵庫の前で何かを飲んでいる茜くんに歩み寄った。






「茜くん、ごめんなさい!!間違って茜くんの携帯のメール読んじゃいました」


「メール?」




茜くんに携帯を差し出すと、茜くんは画面を見つめてからパコンと携帯を閉じた。





「…茜くんが元気なかったのは天音さんをフってしまったからですか?」


「多分ね。天音は他の女の子とは違うから…」




それは…特別ってこと?




ならなんで天音さんじゃなく、私を彼女にしてくれたの?





「天音とは高校の時に知り合ってずっと一緒にいたんだ」




茜くんは天音さんについて話し出した。





「俺、女友達っていないんだよね。女の子はみんな告ってくるから友達じゃなかった。

でも天音は友達でいる事を優先して一緒にいてくれたんだ」




高校生の茜くんを私は知らない。



でも天音さんは

私の知らない茜くんのそばにいつもいたんだ。




それが悔しくて

凄く羨ましいよ…。






「うざったく思ってたけど、冷静に考えてみると天音の存在って大きかったんだなって思ったんだよ。…だから傷付けたのが辛い」




今もし私が、茜くんに別れを切り出したら


茜くんはここまで傷付いてくれるのだろうか。




きっと、傷付かないよね。





そう思ったら悲しくて

涙が零れ落ちてしまった。
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