再会
『競演』

恨みが穴から這い上がってきた。目の前に立ち尽くしてるあのころの愛。
うつろな視線が宙を泳ぐ。だんだん視線が降下する。

生気?そんなものはいつの時代のことやら。

穴から恨みが完全にでると、そこには虚無感……いや、欠落感というネットが覆いかぶさる。

それはまるで落とし穴。どんな感情がそこへ不意に堕ちていくのか。


恨みはあのころの愛の手を取った。まるで二つで一つの存在かとでも言うかのような光景。

本来そこに言葉は要らない。しかし、恨みはあえて言葉を発した。

「今度その穴に落ちるのはお前ならいいのにな」

「……」

だからといって、あのころの愛が熱を持ってまた再びあのころに戻るはずがない。
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