本と階段


階段の近くを通ったら静かに、慎ましく“彼”がいた。



『(あっ…あの時の…)』



私は彼の事を見て数日前のことを思い出した



『(どうしよう…声、とか、かけた方がいいのかな…)』



「…そこ、すぐ側にガム落ちてるよ踏まないように気をつけた方がいいよ」


彼は下をいや、本を読みながら私に言った



『えっ!?嘘ッ!!』



避けて捜そうとした第1歩に見事、“ぐにゃり”と自分の履いていた靴から感覚が来た


見事に、そりゃぁ、もうキレイに踏んでしまったのだ、哀しいくらいに…



「だから言ったのに…」



『…もう少し早く言って欲しかったな』



「また、今度、近くに落ちてたらそうするよ」



私は、“また今度”が無い事を願いたいと思ったけど、


だって、ガムを踏みそうな場面にそうそう会いたく無いし、なりそうに無いんじゃないかと思ったから




『…そうして下さい』



と“一応”言っておいた


ガム踏んだりしてるのって、心地好いモノじゃないし出来れば踏みたくなかったから。


< 8 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop