本と階段
階段の近くを通ったら静かに、慎ましく“彼”がいた。
『(あっ…あの時の…)』
私は彼の事を見て数日前のことを思い出した
『(どうしよう…声、とか、かけた方がいいのかな…)』
「…そこ、すぐ側にガム落ちてるよ踏まないように気をつけた方がいいよ」
彼は下をいや、本を読みながら私に言った
『えっ!?嘘ッ!!』
避けて捜そうとした第1歩に見事、“ぐにゃり”と自分の履いていた靴から感覚が来た
見事に、そりゃぁ、もうキレイに踏んでしまったのだ、哀しいくらいに…
「だから言ったのに…」
『…もう少し早く言って欲しかったな』
「また、今度、近くに落ちてたらそうするよ」
私は、“また今度”が無い事を願いたいと思ったけど、
だって、ガムを踏みそうな場面にそうそう会いたく無いし、なりそうに無いんじゃないかと思ったから
『…そうして下さい』
と“一応”言っておいた
ガム踏んだりしてるのって、心地好いモノじゃないし出来れば踏みたくなかったから。