君にハートを盗まれた。

先輩…こっち向いてくれないかな?


まるでテレパシーを送るように、先輩に


「振り向いて!あたしに気づいて!」

心の中で、何度も叫んだ。


思い出せば、付き合うまでの日々は、ずっと、こんな感じだったな。


げた箱前の廊下で、何度も先輩に「あたしに気づいて」ってテレパシー送っていた。


気づいてくれたら嬉しくて。


気づいてくれなかったら悲しくて。



一方通行だったあたしの恋。


今は、ちゃんと…


「あっ、ヒカリ!先輩、こっち見たよ!」


本当だぁ…。先輩、あたしに気づいて手を振ってくれた。


「ほら、ヒカリも手振りなよ」


「けど…」


恥ずかしがっていると「なに、彼女が恥ずかしがってんのよ!」背中に美空からのキツイ一発がパシン!と響いた。


「分かったから、叩かないでよ」


ドキドキしながら、先輩に手を振ると。ニカッと眩しいぐらいの笑顔で、あたしに手を振りかえした。



先輩は、それを見ていた同級生から、からかわれるようにグラウンドに向かうと、もう一度振り返って


「す・き・だ・よ」


と口パクで言ったんだ。




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