君にハートを盗まれた。

「ヒカリ…愛されてるね」


美空がニヤッと笑いながら言うから、あたしの顔は、余計に赤く茹で蛸になった。


そんなあたしの耳に「なんで田崎さんなの?」棘を帯びた言葉が聞こえてきた。


美空がとっさに「いま、誰が言ったの?」怒りを込めた低い声で、周りを見渡しながら言うと


「あたしだけど」



クラスメートの大西さんが、真っ直ぐとあたしの顔を見て言った。



その瞳は、まるであたしが先輩の彼女だということが、納得できないと伝えているような

心に突き刺さるような瞳で。



目を逸らしたくなるような感情を感じた。



この人も、先輩の事が好きなんだ。




だからって、あたしも、負けられないんだ。


大西さんの瞳を、あたしも真っ直ぐ見つめた。




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