君にハートを盗まれた。

「どうしたんですか?」

「あっ、また“ですか”になってるぞ」

先輩が嬉しそうに言った。

「あっ!」しまった…気を抜くと“ですか”になっちゃうよ。

ニヤッと口角を上げて笑う先輩。その顔は、もしや…。

「今の、なかったことに…」


「ダメ。はい。ここにキス」


自分の右頬を指差して言う先輩。


先輩は、最近あたしが敬語を使うと本当にキスを要求するようになった。


「うぅ…」照れまくるあたしを楽しむように


「ほら、早く。早くしねぇと誰か来ちまうぞ」


うっ…Sだ。先輩。完璧にSだ。

「ほら」とかがみながら言う先輩の頬。辺りをキョロキョロ見渡して、誰もいないのを確認。

よし、誰もいないよね?


真っ赤になりながら軽くチュッとした。

「よし」満足そうに笑う先輩。


だけど、こんな先輩も嫌いじゃないんだよね…。

あたし、本当に先輩に惚れてるなぁ。

1人ため息をこぼすと「なに?」って少年みたいな笑顔の先輩。


「うぅん」って首を横に振りながら「可愛いな」って心の中で呟いたことは、先輩には、秘密なんだ。



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