君にハートを盗まれた。
黙り込んだまま、あたしの手を引いて歩く先輩。
先輩の背中は、心なしか怒っているように感じた。
「先輩…?」
遠慮気味に声をかけてみる。
だけど、先輩は、黙ったまま。何も言わない。
どうしようかな?
もしかして、怒っているのかな?
あたしが、ついていってこんな事になったから…。
「先輩…あの…」
裏庭から少し離れた場所にある体育館裏に通りかかった。
体育館からは、部活中のバレー部の声とボールが弾む音が聴こえている。
「バレー部、頑張ってますね」
そう言ってみたけど、先輩はずっと無言のままだ。