君にハートを盗まれた。
「ヒカリ…?」
あたしの腕の中で、戸惑うように顔を上げようとする先輩。
「ジッとしていてください。これってカナリ恥ずかしいんですから…」
「あ、あぁ…」
先輩は、そのままあたしに言われるまま…ジッとしている。
先輩をこうやって抱きしめる事は、本当に恥ずかしい。
けど、元気がない先輩の顔を見てたら、抱きしめたくなっちゃったから…。仕方ないよね…。
「ねぇ、先輩。」
「うん」
「先輩も…あたしから離れないでくださいね」
「うん…」
「あたし…先輩が思っている以上に、先輩が大好きなんですから…」
激しく波打つ鼓動…。先輩に恥ずかしいぐらい伝わってるね…。
ねぇ、先輩。あたしの想い、伝わりますか?
「先輩が…大好き」
そう呟いて…もう一度ギュッと抱きしめた。
「うん…。俺もヒカリが大好きだよ」
先輩はそう言うと、あたしの背中に腕を回してギュッと抱きしめた。
少しだけ開いていた保健室の窓から、冷たい風が吹いてきて
火照った体を優しく包み込んだ…。