君にハートを盗まれた。
「ヒカリ…あんた…早すぎだよ…」

息を切らしながら美空が駆け寄ってきた。

「ごめん…。つい…」

先輩から逃げ出したくて…。

「ヒカリ…。どうして逃げたりしたの?」


「だって…。あんな事があって、先輩の顔、まともに見れないし」


とにかく、逃げ出したかったと告げた。
美空は、ハァ…と大きなため息を1つこぼすと、仕方ないんだから…と、呆れたように笑った。


「とにかく戻って美術室行こう。ヒカリ走り過ぎだよ。美術室、通り過ぎるんだから」


あたしの手を取り、歩き出した美空。
美空に言われて自分が美術室を通り過ぎていた事に初めて気づいた。

「ごめん。美空」

美空に手を引かれながら、来た道を戻った。


そして、先輩とぶつかった曲がり角が見えてきた。

そこには、もう先輩の姿はなくて…逃げ出したのに。

切なさが、胸に影を落とした。




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