君にハートを盗まれた。
「放してください!」
握られたままの腕を思い切って振りほどいた。
「悪い。痛かったか」
なんて…。そんな優しい瞳であたしを見ないで。
これ以上、あなたを好きになりたくないよ…。
先輩の視線から逃れるように顔を背けた。
腕にはまだ、先輩の力強い腕の感触が残っていた。
掴まれた部分だけが痛いぐらいに熱を帯びていて。その部分をさするだけで涙が溢れそうになる。
「先輩…。どうしてこんな事するんですか?こんな事されたら…」
こんな事されたら、あたし…先輩のこと…もっと嫌いになれなくなるよ…。