君にハートを盗まれた。

「そのぬいぐるみ、可愛いな」


不意に先輩の声が聞こえてきて、あたしの腕の中からイルカのぬいぐるみをヒョイと持ち上げた。

「えっ?」


戸惑っていると「ちょっと待ってて」だけ言って先輩は、ぬいぐるみを抱いたままレジへと向かった。


そして、支払いを済ませて戻ってくると


「はい。これ」


ニカッて笑いながら、あたしの腕の中に再び抱かせてくれた。


「えっ?先輩?これ…」


「プレゼント」


「えっ!?いいんですか!?」


慌てて聞くと

「あぁ。きょうの記念…だよ」


少しソッポを向いて照れくさそうに言った。



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