1 3 6 5 8 3

受け取った紙切れのしわを延ばしてみる。


「…『お好きな煙草をひとつサービス』…」


あぁ、そういえばうちのコンビニそんなサービスしてたな…


「…では、こちらのサービス券と引き換えで?」

「はい、お願いします」

苦笑いの中に何処か安心感を漂わせつつ、サラリーマンは乱れたスーツを整えながら答えた。

俺は苦手な愛想笑いを少しだけ作りながら、彼に煙草を差し出す。

彼はそれを受け取りながら、レジに積もった紙の山に視線を落とした。

「あ…悪いけどそれ捨てといてもらえるかな?」


なんだよそれ…


「えぇ、わかりました」
明らかにうちのコンビニには無関係のレシートやらメモやらばっかりだ。



此処はゴミ箱じゃねぇっての…




サラリーマンが店を出た途端、瞬時に愛想笑いが消える。



ほんっとに…めんどくせぇヤツばっかし…




俺は積もった白い紙切れを両手でかき集めようとした。

しかしその中で、あからさまに一枚だけ皺のよっていない、ピンと張った綺麗なカードのような紙が混ざっていた。



< 12 / 37 >

この作品をシェア

pagetop