1 3 6 5 8 3
なんだこれ…

その小さなカードのようなものを拾い上げてみる。
表面がツルツルしたその薄い緑色のカードには…



「…3―12…馬券…?」


ふと書かれた日付に視線を落とす。

「…今日のレースのじゃねぇか…」


あのサラリーマン、うっかりゴミと一緒にしちまってたんだな。

もしかしたらこの組み合わせが当たるかもしんねぇってのに。


俺はふと閉じられた扉の外を見た。

次第に明るみが増した外の景色には、分厚いコートやマフラーを身に纏った人達が慌ただしく歩いている。

まだ彼が店を出てからそんなに時間は経っていないし、追い掛けて届けてやろうかと、ほんの少しだけ思った。



…けどこの寒い中外出るのはなぁ…


十分過ぎるほどに暖房の効いた店内からは、ほんの短時間でも出ることが疎まれた。


アイツが捨ててくれって頼んだんだし、俺には関係ねぇやな。

どうせたいした額は賭けてねぇんだろ?


そう思いながら、もう一度手にした馬券に視線を落としてみた。


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