1 3 6 5 8 3
「…………!!」
お…
おい…冗談だろ…?
寒さ以外で手が震えるなんて、初めての経験かもしれない。
怖くても緊張しても、冷や汗は出るが、こんなにも身体が震えたことはなかった。
「マ…ジかよ……」
俺の手の振動でブルブルと揺れる一枚の紙切れ。
いや、もうこうなったら「紙切れ」なんて表現は使えないのかもしれない。
―1,000,000円―
「ひゃ…ひゃく…まん…?」
視界の中で、0の数字がぶれてよく見えない。
でも「,」の数から推測するに、俺の思う金額に間違いはないはずだ。
―東京競馬 9レース―
俺は慌ててレジを飛び出し、新聞が売ってあるコーナーへと向かった。
震える手でスポーツ新聞を探し出し、バサバサとめくる。
もし…あのサラリーマンの選んだ「3―12」が勝てば…
もしその組み合わせが一番人気で、例えオッズが1 .2倍程だとしても…
それでも…
「1…20…万……」
俺はゴクリと生唾を飲み込んだ。
あのサラリーマンにしてみれば、100万でこの馬券を購入しているわけだから20万の儲け。
たとえそれでも極貧の俺にしてみれば、よだれもんだ。
だが、一銭も出資していない俺にとって、もしこの馬券が当たれば…
120万の…ボロ儲け……?
身体の中を、期待がドクンと期待が駆け抜けた。
120万……この俺に…?
もし…もっと高いオッズが付けば…
「………っ」
バサバサバサッと新聞とめくり、競馬欄を探す。
「…これだ…」
―東京競馬 如月杯―
俺は精一杯に酸素を吸い込んで気持ちを落ち着かせようとしたが、締め付けるような心臓の動きが邪魔してうまくいかない。
鼻息を荒くしながら、貪るようにそのページを読んでいく。