1 3 6 5 8 3

「…さっみー…」


白と灰が混ざったような外の空気は、店内で温まっていた俺の体温を容赦なく奪っていく。


ふと、かじかみかけた両の手をジーンズのポケットに押し込んだ。






――カサッ


「………!!」


長時間のバイトで、俺はすっかり忘れていた。


運命を握る――あの1枚の紙のことを。




――3億円―――





「……クッ…」


あまりに阿保らしくて嘲笑するしかなかった。


3億だと?

こんな紙切れが?


この馬券を手に入れた時は、芳史の言葉も手伝って、もしかしたら――そう思った。


…馬鹿みてぇ。



ひたすらコンビニのバイトに徹していた俺には、もう朝のような興奮はカケラも残ってはいなかった。
< 20 / 37 >

この作品をシェア

pagetop