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「…さっみー…」
白と灰が混ざったような外の空気は、店内で温まっていた俺の体温を容赦なく奪っていく。
ふと、かじかみかけた両の手をジーンズのポケットに押し込んだ。
――カサッ
「………!!」
長時間のバイトで、俺はすっかり忘れていた。
運命を握る――あの1枚の紙のことを。
――3億円―――
「……クッ…」
あまりに阿保らしくて嘲笑するしかなかった。
3億だと?
こんな紙切れが?
この馬券を手に入れた時は、芳史の言葉も手伝って、もしかしたら――そう思った。
…馬鹿みてぇ。
ひたすらコンビニのバイトに徹していた俺には、もう朝のような興奮はカケラも残ってはいなかった。