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300,000,000…か…?
えと…
いち…じゅう…ひゃく…せん…まん……
「……ひっ!!」
思わず奇声を発して、身体がよろめいた。
ぶつかりそうになった主婦が、何かブツブツ言いながら怪訝そうに俺を見て、去っていった。
俺は謝るどころか、頭を下げることさえしなかった。
―――いや。
出来なかった。
普段からしないだろうと言われればそれまでだが、この時の俺は今いるこの世界が本物かどうか疑いたくなるほどに平常心を失っていたのだ。
「…3…億………」
寒空の下で呟いた俺の声は、ざわめく街の声に瞬く間に掻き消された。
ドクン、ドクンと信じられないくらいにはっきりと自らの血が送り出される音が聞こえる。
3億だって…?
俺が…?
この俺が…
3億円を手にする…?
「冗…談…だろ…?」
顔を引き攣らせながら、舞い上がって発狂しそうになる自分に言い聞かせる。
そうだ…
そうだ確認…
確認しねぇと……
荒い息が次々と白い気体に変わり、瞬時に消えていく。
寒さからなのか、何なのか分からないくらいに震える手を、古びたジーンズのポケットに突っ込んだ。