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穴だらけの黄ばんだカーテンから、微かに差し込む光。
いつの間にか季節は秋から冬へと移り変わり、朝日は眩しさを失っていた。
俺は身体を起こしたまま、肩まで布団を引き上げた。
胸と首は温まるが、背中にまで布団は届かず、冷気がまとわりついてくる。
「まだこんな暗ぇのにホントに朝かよ…」
呟いた言葉が、小さな白い息に変わる。
「バイト…行きたくねぇなぁ……」
息の白さを確かめるように、もう一度言葉を吐く。
今度は先ほどよりもはっきりと吐息の白さが見えた。
こんなに寒いのに、バイトなんてやってらんねぇよ…。
だが、そうもいかない。
親にも見捨てられたフリーターの俺には、バイト以外の収入源なんてなかった。
このオンボロアパートのすぐ傍を電車が通る度に、不安定な窓はカタカタと揺れ、乾いた木造の壁がキシキシと音を立てる。
そう言えば、今月の家賃払ってねぇや…。
目付きの悪い大家のオバサンの顔が浮かんで、多少の吐き気をもよおした。
「バイト…行かなくちゃな…」
俺は名残惜しそうに、ひらべったい掛け布団を身体から剥ぎ取った。
「うぉっ、寒っ…!」
いくら薄い布団とはいえ、あるとないとじゃ大違い。
思わず両手で身体を押さえ込んだ。