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俺はさっき歩いていた商店街を逆流し、再びバイト先のコンビニまで戻ってきた。


「はぁ…はぁっ…!!」


今にもちぎれてしまいそうな喉を、尖った空気が往復する。


ふと扉の外からコンビニの中を伺えば、あのバイトの高校生が、今だにぬくぬくとレジで売り物を広げていた。


「………チッ!!」


両の膝に手で体重をかけ、身体を曲げて呼吸を整えながらも、顔をしかめて舌打ちをする。



人の気も知らねぇで…!



むしろ俺が3億という大金を手に入れたなどという事実は知られては困るのだが、

こうして寒空の中息を荒げる自分とは正反対に、
暖房に守られた世界にいるあの高校生に、無性に腹が立って仕方なかった。



「は………っ金…っ!!」


俺は思い出したかのように、慌てて周囲を捜索する。


最後にあの馬券の感触を感じたのは、バイトが終わって店を出たあと、ポケットに手を突っ込んだ時だった。

取り出してみたわけではないが、あの少し固くて、ツルツルとしたカードの感触は間違いない。


あれは

3億円のカードだ。



とすれば、なくしたのはその後しかない。


しかし辺りを見渡してみても、カードのような物は落ちてはいないようだ。

落ちているのは、腐った煙草の吸い殻ばかり。

もし此処で馬券を落としたにしても、この風の強さだ。

どこかに吹き飛ばされていてもおかしくはない。

「くっそ………!!!」



俺は歯が食い込むくらい強く唇を噛んだ。

冷気で乾燥され、感覚を失った唇は、もはや痛みは感じない。


薄いジャンパーから顔を出しているかじかんだ拳を、震えながら握りしめた。


3…億…


3億だぞ…?


全てが…

俺の全てが…人生が変わるんだぞ…?



あれは…

あの3億は…



「俺のものだ…!!」


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