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コンビニの前のアスファルトの駐車場。
這いつくばって馬券を
いや、3億円を探す。
冷たくなんてない。
痛みなんてない。
3億円が手に入るのに、他の感覚なんか、俺にはもう必要ない。
「3億…3億……」
無意識の内に、まるで呪いのように呟いていた。
かじかんだ手の平がアスファルトの凹凸にすれ、乾燥した手の薄皮が剥ける。
コンビニに立ち入ろうとした客が、足元を這う俺を一瞥して去っていく。
通りすがりの主婦が怪訝そうな顔を浮かべて何度も俺を振り返る。
まるで大トカゲのようにアスファルトを這う俺は、気違い以外の何者でもなかった。
―お探し物ですか?―
もし俺が普通なら、親切な誰かからそう尋ねられていたかもしれない。
しかし、誰しもが俺に声をかけるどころか、俺に視線を向けることすら厭んでいた。
そりゃそうだろう。
血走った目で、息を荒げながらアスファルトを這いずり回る一人の男。
ボロボロのジャンパーに、ボサボサの髪。
むしろ通報する方が普通だ。
けれど、誰もわざわざ俺みたいなヤツと関わり合いを持ちたくはなかったのだろう。
警察が来ることはなかった。
―お探し物ですか?―
だが、たとえもしそう尋ねられても、俺は答えなかったかもしれない。
だって俺が探しているのは
「俺の…俺の3億…っ!」
普通のものじゃ
なかったから。