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壁にかけてあった、これまた薄いジャンパーを手に取る。
どうせ俺には、汚れたベージュがお似合いなんだ。
カシャカシャ音を立てるジャンパーを羽織り、しっかりとチャックを締める。
毛玉で埋め尽くされた灰色のジャージを脱ぎ捨てて、色褪せたデニムに足を突っ込む。
「ひっ…!」
冬の空気に冷やされた生地が、瞬時に俺の体温を奪っていった。
数着しかない衣服の中で、此処最近は専らこの格好だ。
別にバイト先のコンビニに行けば制服に着替えるわけだし、それまでの道程がどんな格好だろうと気にはならない。
ただ、俺と同じ20代前半の男どもの中には、それが許せないという奴がいることは、俺も分かっていた。