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the 2nd
バイト先のコンビニに向かうには、商店街を真っ直ぐに抜けなくてはならない。
ここの商店街にはやたら八百屋や魚屋が多くて、朝7時を過ぎていれば十分におばさん達で賑わっている。
まるで小さな市場。
やかましくて仕方ないが、そこを通るのが一番の近道なのだ。
今日は日曜だし、さすがのおばさん達も家でゆっくりしているだろうと思えば、早速こんな声が飛び込んで来た。
『奥さん!今日も活きがいいの入ってるよ~!』
『あら~じゃあ頂こうかしら』
『あ~もうお得意様だから、田中さんはこれ持ってっちゃっていいよ!』
『こんなに~?助かるわ~』
朝からよくそんな元気な声が出せるな。
愛想笑いとお世辞が渦巻く、表の世界。
俺はまるで異空間を歩いているみたいだった。
商店街のもう一本後ろの道は、比較的広かった。
店と店の間の、ほんの狭い隙間からは、車がビュンビュンと駆け抜けていくのが見える。
日曜のこんな朝から、皆、いったい何処へ向かっているのだろう。
―西暦2050年―
車は相変わらず地面を走っているし、ロボットは未だにぎこちない動きでスポーツをする。
事前に記憶させられた言葉しか話さないロボットに、いつしか俺たち人間は飽きてしまっていた。
2010年。
今から約40年前、つまり俺が生まれる約20年前に、
日本はその歩みを止めてしまった。
―これ以上利便を追究して何の意味がある?―
―もう十分だろう?―
―それよりもっと大事なものがあるんじゃないのか?―
疲れ果てたエンジニア達。
次から次へと新製品が生み出されていた時代は、もう終わった。
同じレベルの製品が、ただ繰り返し製造されていくだけ。
しかしそれでは購買率が上がらないからと、製品の丈夫さの水準を下げたために、最近の電化製品は、どこのメーカーのもすぐ故障する。
だからといって保証書なんて存在しない。
2032年に廃止された。