陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
鳴かぬなら、殺してしまえ、ホトトギス。
だったっけ。なんか怖そうなイメージは確かにあるけど、織田信長がどんな人かなんて知らないんだもん。


「本当に、知らないのか?」

驚いたような顔をする小太郎に、幸姫はおずおずと頷いた。

「逆らうものは容赦なく殺し、他国を侵略する為であれば、どんな手も使う。その為に死んでいった民も少なくはない」

小太郎に言われて、なんとなく残虐な感じは受けたが、やはりいまいち幸姫にはぴんとこない。

「えっと、とりあえず、あんまし良い人じゃないってこと?」

幸姫の言葉に少し首を傾けながら、小太郎は頷いた。

「よくわからないが、信長を良い人だと言うやつは、あ奴の側近くらいのものだろう」

「…豊臣秀吉とか、明智光秀とか?」

幸姫が言うと、小太郎はこくりと頷いた。

「とにかく、やはり俺は信長を討つ」

小太郎はそう言って起き上がろうとする。

「…わかったよ。そこまで言うなら止めない。だけど…」

幸姫は小さくため息をつくと、一番傷が深かったであろう場所を軽く突いた。小太郎の動きが止まり、顔が一瞬痛みで歪む。

「とりあえず、治ってからでもいいじゃん。そんな体じゃまた、返り討ちにあうのがオチだよ?」

そう言って無理やり小太郎を布団に寝かしつけようとした。

「それに…そんなにあせる必要はないと思うし」

信長は、本能寺の変で光秀に殺されたはず。今はまだ生きてるみたいだけど、信長がいなくなればいいのなら、この事件が起きさえすれば、小太郎も危険なことをする必要なくなる。

「いや、このくらいの怪我など」

「問答無用」

ばしん!と小太郎の傷口近くを叩く。小太郎は声こそ出さなかったが、相当痛かったようで、顔を背けてそのまま布団で横になった。

「…命は大切にしなきゃ」

幸姫はそう呟き、小太郎に掛け布団をかけた。


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