陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
小十郎の視線が、空に煌々と輝く月に移る。


「幸姫、お前にとって大切な人はいるか?」

言われて幸姫は頷いた。

「では、その人が殺されそうになっているとき、お前は相手を傷つけずに助けることができるか?」

「それは…でも、殺さずに助けることはできるかも知れないじゃん」

「また、襲ってきたらどうする?次はお前のいないところで襲ってくるかも知れない」

小十郎に言われて、幸姫は言葉に詰まる。

「殺さずにすむなら、そうする。だがな、そのせいで民が苦しみ、殺されてしまったらどうする?」

「だけど…!」


小十郎の言い分はわからないでもない。
私の考えなんて、言ってみれば戦だの、戦争だのとは無縁の時代に生きている人間の考え方なんだ。
明日も無事生きていられる保証なんてどこにもないこの時代に生きている人間からしてみれば、私のいっていることは綺麗ごとで、ただの戯言にしか聞こえないと思う。

だけど、それでも。

過去にあったたくさんの出来事を伝え、教えられてきたからこそ。


命の大切さも、重さも。わかっているつもりだ。


なのに。


「幸姫の言いたいことはわかる。だが、これが戦なんだ」


きっぱりと言い放つ小十郎に、幸姫は何も言えなかった。



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