陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
ありえない。
そんなわけない。

だって、自分がこの年になるまで、それこそ、出張だとか、取材だとかで家を空けることは多かったけど、連絡がつかなかったことなんて、一度もなかった。

そんな母が、戦国時代に同じようにタイムスリップしていたなんて。
そんなわけ―――


「覚えては、いないか?」

幸村に声をかけられて、ハッとする。
心臓がまた、どくんと大きく跳ねた。


『ゆきむら!』


何度も何度も繰り返される映像。
だけど、一緒によみがえってくる感情はただ、辛く、苦いものでしかなかった。

幼い頃に自分が必死で叫んでいる名前。
偶然にも、その名前は今、目の前にいる戦国武将と同じものだ。


「まさか…」

目を大きく見開き、幸村の方を見る。

「…お前は、俺と玲子の娘なんだよ。幸姫」


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