陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「…さち」

たとえ自分のことを知っている人間がいない世界だとしても、なんとなく、本名を告げるのはまずいと、幸姫の第六感が囁いた。


「ふむ…聞いていた名とは少し違うようだが…まぁよい」

顎髭を撫で付けながら、男が呟いた。
幸姫はふいっと視線をそらした。

「信長殿からの通達書にあった人相書にそっくりだからな。間違いはないだろう」



その言葉に、幸姫は思わず目を丸くした。
が、すぐに表情を元に戻す。
思わず驚いたことを、気取られるのはまずい。


「しばらくそこにいるがいい」

ふんっと鼻を鳴らして、男は牢の前からいなくなった。




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