陽のあたる場所で 〜戦国遊戯3〜
「母さんのこと…知っているの?」

幸姫の言葉に、小十郎の動きが止まった。

「母、だと?」

小十郎に言われてはっとする。
思わず同じ名前だった為、母と言ったが、よく考えてみれば、ここに母がいるはずがないし、母のことを知っているはずがない。


…ここが、本当に小十郎の言う通り、戦国時代の奥州だとすれば。
自分が住んでいた頃から、何百年も昔の時代だとすれば。


そんなはずはない。そんな、非現実的なことが起こるはずがない。
そう、思いたかったが、周りの状況がそんな幸姫の淡い希望を打ち砕いていく。

だからこそ、幸姫は、自分の母親のことなど、小十郎が知っているはずがないと思った。

「なるほど、これで納得がいった」

小十郎はそう呟くと、小さなため息をついて幸姫をじっと見つめた。

「俺は政宗様のところへ行くが、お前は屋敷から出るんじゃない。戻ってくるまで、ここでじっとしているんだ。いいな?」

「へ?なんで…」
「なんでもくそもあるか。いいな、大人しくしていろよ」

そう言い残して、小十郎は部屋を後にした。


…なんだっていうのよ、一体。


今度は幸姫が小さくため息を漏らした。


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